大学はもう死んでいる? トップユニバーシティからの問題提起

 

 日本の教育が目指す先

今、日本の教育は行き場を失っている。これからの社会に対してどのような人材を輩出していけば良いか、教育界での共通認識が取れていないのだ。最近はよく「グローバル人材」という言葉を耳にするが、その本質は具体的にどのような人材であり、どのようにして育成すべきなのか。その答えをきちんと定義し、それぞれの教育機関がカリキュラムを作るべきなのではと感じる。

かつての日本は英米に追いつき追い抜くことを目指し、あらゆる分野において近代化を目指した。産業の領域で国力を強化するべく、日本の産業を担う人材を育成するための、いわゆるキャッチアップ型の教育を施してきた。結果として日本も近代化に成功した。

これまでは目指すもの、「正解」がはっきりしていたが、これからの時代はそうではない。技術革新や複雑化する政治問題がこれまでにないスピードで発生する中で、世界をリードし社会問題を解決していける人材とはどんな人材なのか。それがはっきりしておらず、政府の方針も明確なものがないため、日本の大学はそれぞれの教育理念を掲げ、それぞれの方針で人材育成を行なっている。まずは国が1つの「答え」を探すところから始めなければならないのではないだろうか。

 

文系の使命

「文系学部廃止論」というものがある。技術発展をもたらす理系に対して、文系出身の人材の意義を論じるというものだ。AIの発展により人間が取って代わられる仕事が増えていくことが予測される今、文系が行うべきことは、「目標や価値を明確にすること」だという。文系が目標や価値観を設定し、それを実現するための手段として理系が頑張るという位置付けを本書では提起している。

 

大学という組織の意義

世界中に存在する社会問題を解決できる強いリーダーを輩出するために、大学という組織の重要性は言うまでもない。しかし、若いうちから自分の人生の目標について考えたり、それに基づいて進路選択を行うことは多くの人にとっては簡単なことではないと思う。だからこそ、中高生のうちから自分の価値観を理解したり、どのような人生を歩みたいかを明確にできるような教育を大人が施すことができたら良いのではと感じる。確固たる目標を持って、専門的な知識や能力を身につけられる大学という組織を活用できるような若者が増えることが理想的だと思う。